【コラム】医学英語のススメ<第3回:ライティング・英語テストについて>

南江堂 洋書部
安川康介氏

《著者》
安川 康介
ホスピタリスト・南フロリダ大学助教

<第1回:はじめに・スピーキング>はこちらから
<第2回:リスニング・リーディング>はこちらから

この連載では、医学英語に興味のある医学生の方や研修医の方に向けて、「医学英語」の勉強法について書きたいと思います。医学英語は、私の医師としてのキャリアを支えてきた最も大切な知識・スキルの一つです。

ライティング

私を含め英語を第一言語としない人にとって、ChatGPTを含めたAIサービスによる恩恵は、特にライティングの分野で大きいと感じます。

医学論文の執筆、臨床留学を目指している人であればPersonal Statementの作成など、今まで英語のライティングに労力を費やしてきた方は多いと思います。私も、研修医の時にレジデンシー応募のためにPersonal Statementを長い時間かけて英語で書き、さらに編集サービス(EssayEdgeなど)にお金を払って編集をお願いしていました。今は、英語論文を書くときの文法の確認や表現については、気軽にAIサービスに問いかけられるようになりました。非常に大きな変化です。

とは言っても、自分で英語を書く必要がなくなったわけではありません。例えば、海外の大学院の提出物など執筆物によっては、生成AIの使用を禁止しているものもあるので、これについては事前にポリシーを確認する必要があります。Turnitin など、AIを使用して文章を作成していないかチェックするツール自体も発達していることは知っておいた方が良いと思います。論文でも、AIを使用した場合は、使用したことをカバーレターや原稿に明示する必要があることがあります(例:ICMJE)。

医学英語のライティングについては、先述したリーディングにも関係しますが、論文を読み医学英語で使われている表現について知り、実際に自分で書いてみるのが一番の近道ではないでしょうか。

私が学生だった頃、医学生の頃から基礎医学・臨床研究に関わり、積極的に論文を書いている人は学年では少数だったように思います(今では変わっているかもしれません)。米国では、特に競争が激しい診療科のレジデンシーに応募しようと考えている医学生や、競争が激しいフェローシップに応募しようとしている研修医は、選考で有利になるために積極的に研究に関わり論文を執筆しています。興味がある分野の研究をしている先生を調べ、コンタクトをとり、どのような研究や論文執筆に参加できるのか相談してみると良いでしょう。学生や研修医時代に、興味深い症例を経験した場合は、ケースレポート(症例報告)やクリニカルイメージにまず取り組んでみると、医学英語のリーディング・ライティングスキルは上がると思います。

医学生・研修医時代の英語テスト

「英語を勉強した方が良いとなんとなく分かっているけど、他の勉強や活動が忙しいので、どうしても後回しになってしまう」
そんなふうに思っている方も多いと思います。

私も、やらなくても良いことはどうしても後回しにしてしまいがちです。そんな時私は、自分に焦燥感を持たせる何かしらの仕組みを作る、ということをします。英語であれば、TOEFL(もしくはIELTS)の試験日を予約してしまう、のも一つの手です。日本ではTOEIC L&Rが人気ですが、スピーキングとライティングがなく、英語はビジネスに偏っている上に、米国では認知度は低く、医学系の大学院の応募でも使うことができません。TOEFLは大学の講義・ディスカッションなどで使える英語のための試験なので、医学英語を伸ばすための土台にもなります。英語を聞いたり読んだりしてまとめる力、英語を話す力を含めた総合的な英語力を伸ばしたいのであればTOEFLの受験をお勧めします。

ハーバード大学T.H.Chan公衆衛生大学院のMaster of Public Health (MPH)の応募で求められるTOEFL IBTの点数は104点以上となっているので、100点を一つの目安にすると良いでしょう。

以上、医学英語のスピーキング、リスニング、リーディング、ライティングについて、私の個人的な経験とアドバイスを簡単に書いてきました。もちろんこれらの要素は独立しているわけではなく、相互的に関係しているので、どこかを伸ばせば全体的に英語のレベルは上がります。一度に全部やると圧倒されるので、何か自分が楽しめる、取り組みやすい医学英語の知識・スキル(リンキングを聞く訓練、単語を覚える、英会話を練習する、など)から気軽に取り組んでみてください。医学英語は、必ず大きな財産になるはずです。皆さんのことを応援しています。

(了)

この記事の著者

安川康介氏

安川 康介

ホスピタリスト・南フロリダ大学助教

2007年慶應義塾大学医学部卒業。 日本赤十字社医療センターにて初期研修を修了後渡米。ミネソタ州ミネソタ大学医学部内科レジデンシー、テキサス州ベイラー医科大学感染症フェローシップ修了。米国内科専門医・感染症専門医。

First Aid for the USMLE Step 1, 2025 (35th ed.)
enago
記事URLをコピーしました